■Hatsune（初音）竣工に向けて

設計者から
　Hatsune（初音）は、「生活の手掛かりのあるお部屋」です。
　ワンルームと言えば、単なる箱状の部屋になりがちですが、そのような部屋では家具を持ち込んで生活を想定するにもなかなか手掛かりがなく、寝るところも暮らすところも一緒くたになって、生活にメリハリもつくれません。Hatsune（初音）ではそのような状況に着目しました。
　ひとつはベッドスペースです。ベッドのためのニッチやコーナーをもうけることで、寝るところがリビングやダイニングと緩やかに分けられますので、友人が遊びに来た時も二人暮らしの時も快適で奇麗に暮らすことができます（201、202、203、303号室）。また、無駄になることの多い通路や部屋のコーナーにはちょっとした机や棚を造り付けて、パソコンなどをするためのデスクスペースがインテリアを決める重要な要素になっています（204号室除く）。最上階では、大きな屋根裏を利用した広めのロフトを、ホビールームや物置、ベッドスペースなど、プラスαのスペースとして使って下さい（204、301、302、303号室）。
　また、1階には茶室があり、茶庭が配置されていますので、賃貸階でもその風情が少し感じられるようにしました。引き戸や棚に日本の伝統色をアクセントとして使ったり、ロフトの手摺を遊び心のある格子にすることで、殺風景なマンションとはひと味違う、色気のあるお部屋にしました。( ©株式会社POINT)

建築主から
マンション名の「Hatsune（初音）」とは、もともと鶯の最初の一声の意味です。また、源氏物語の第２３帖の巻名が「初音」であり、元旦のおめでたい話であることから、初音の意匠は婚礼の調度に使われたりしてきました。マンション初音の表札にも、源氏香の図の「初音」がデザインされています。ここでの暮らしが物語のように幸せで、文化の薫る生活となることを心より願っております。